たりないあたまでかんがえる

たりないあたまでかんがえてみた。車輪の再発明。

ある街の横顔に浮かぶ人工島⑴

地元は古くからの漁師町だ。年中磯臭い風が吹く。実家は海まで徒歩5分ほど。小学校の通学路では、海のほど近くを歩いていた。潮風に巻かれ、赤潮の匂いに顔をしかめながら、海を身近に生きていた。

その海に人工島が作られたのは、思春期が始まったくらいの頃だ。その人工島は国際空港と呼ばれた。海から見える水平線を遮断するように、巨大な島が出来上がっていく。父は地方官僚で、空港関連の業務を任されていた。ぼくはあの頃、日に日に父が疲れていくのを見ていた。父のストレスと反比例して空港は出来上がっていくのを。

空港に交通路を結ぶために橋が建てられた。線路や道路が敷設される前に、そこを歩いたことがある。その足跡は、空港のどこかに刻まれているはずだ。

古くは窯業で栄え、公営ギャンブルで財政を保ってきた街は新たな財源として空港が必要だった。それは、国や政治家の思惑とも合致し、空港が建てられることが決まる。